歴史 を経営者が学ぶ3つの利点(歴史の学びをビジネスに活かす)

2018.01.12 (金)
経営者が 歴史 を学ぶ価値は何か?

歴史年表を経営者が暗記することに意味はない

歴史 を学ぶと言っても、経営者が受験生のように 歴史年表や人物名を暗記してもあまり意味はありません。

もちろん、歴史年表や人物名を知っていて損をすることはありませんが、経営者であれば他に学ぶべきことは山のようにあるでしょう。

 

私自身は学生時代に歴史を勉強していましたし、今でも歴史に関する本を読むのが好きです。

そして、歴史の知識や知見、パターン思考などを、ビジネスの現場での課題発見、課題解決、交渉、営業戦略に役立てています。

この記事では、経営者が 歴史 から学んで役立つ3つのポイントについて考えてみたいと思います。

 

歴史の学び方:物事の経緯・背景を知るために

この目的で歴史を学ぶのは比較的オーソドックスな考え方です。

例えば、国際紛争やテロリズムが 蔓延している背景を考えるときには歴史的な経緯が大きく関わっています。

他にも、アフリカ大陸にある国境はなぜあれほど不自然に直線を描いているのか?

あるいは、南米大陸は殆どがスペイン語を話す国々なのに、ブラジルだけがポルトガル語を喋る国なのか?

もとは多くがスペインの植民地だった南米大陸の国境線はどのような基準で引かれたのか?

などなど、いろいろと物事の背景を知る上で、歴史は役に立ちます。

 

南北格差はどのように生まれたか

例えば、現在のようにテロリズムが国際的に蔓延している背景には、北半球と南半球の経済格差と搾取の構造があるでしょう。

いわゆる南北問題です。

18〜19世紀に西洋列強は地図上で言えば、南半球に軍隊を引き連れて侵入し現地を実効支配しました。

目的は、資源と自国にとって著しく有利な貿易です。

 

実際に、18〜19世紀に西洋列強が植民地化した地域が、主にテロリストの供給源になっていることからも南北問題の影響は見て取れます。

 

国際的事件の背景には歴史あり

もちろん、テロリズム自体は非難されて然るべきで、憎むべき犯罪です。

一方で、テロリズムは何らかのマイノリティがマジョリティに対抗する手段として用いられることも忘れてはいけません。

マイノリティが虐げられ、搾取され、不満と憎悪を鬱積させる状態が、社会構造として維持されればテロリズムが地上からなくなることはないでしょう。

このような見方をすると、ニュースでテロの報道を見ても単純に「けしからん!」と腹を立てるだけでなく、何が背景にあるのか?を洞察する手段になります。

 

同じ思考を目の前で起きている、課題やトラブルに当てはめると、物事への反応の仕方が変わります。

出来事に感情的に反応することが減り、背景や要因を分析する癖がつきますから、課題解決力が高まるのです。

 

歴史の学び方:人間行動のケーススタディとして

歴史を眺めていると、ある状況に置かれた人間がどのように考え、どのように判断するのか?についての豊富なデータの蓄積があることに気がつきます。

例えば、組織のトップと参謀の関係を考えてみましょう。

日本史で有名な参謀=軍師といえば、例えば黒田如水(官兵衛)がいます。

黒田官兵衛は、本能寺の変の折、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)の参謀として、天下統一を助けたとされています。

多分に伝説的な要素を含んでいる部分もありますが、官兵衛が秀吉の中国平定に果たした役割は大きいようです。

また、後の関ヶ原の戦いの折に、短期間で兵力がほぼゼロの状態から軍勢を集め、九州全土をほぼ手中にした手腕から見ても、官兵衛の実力は本物だったと言えそうです。

 

名軍師・官兵衛は冷遇されていた?

しかし、秀吉による天下統一後、官兵衛は功績の割には冷遇されているような印象もあります。

領地は中央から遠い吸収は豊前の六郡12万石に過ぎません。

ただし、秀吉の子飼い武将は、福島正則が24万石、加藤清正が19万石という石高です。

その点を含めて考えると、領地は子飼い武将並の扱いで、中央から遠い領地に封ぜられたという程度かもしれません。

しかし、天下統一後、秀吉の幔幕の中で智謀を巡らすというような役回りから外されたのは確かです。

また、中央の政治に関わることもありませんでした。

要するに、天下統一後は、秀吉政権での黒田官兵衛(如水)の存在感は希薄になっていきます。

有能な人材は恐怖の対象にもなりうる

おそらく、この黒田官兵衛の状況は、官兵衛と秀吉双方の利害が一致した結果だと思うのです。

秀吉からすれば、冷静に謀略を巡らしてことをなすことに長けた黒田官兵衛が敵に回ったことを想像すると危険すぎます。

そうなれば、官兵衛をあまり近くには置いておきたくないでしょう。

 

一方の官兵衛も、覇者が天下を取ったあと、強力な部下ををどのように遇するか?について、不安があったのではないでしょうか?

他国の例では、漢の劉邦は中国統一後、功績のあった韓信・彭越・英布を結果的にすべて殺しています。

反乱を起こしたものもありますが、反乱を起こすような状況に追い込まれたという背景もあるのでしょう。

力の大きすぎる部下は、トップが外的を抱えている時には強い味方ですが、戦うべき相手がいなくなった後では単なる危険物になってしまうわけです。

天下統一後、自分が韓信・彭越・英布のような立場になることを恐れた黒田官兵衛は早々と嫡子・長政に家督を譲ってしまいます。

 

官兵衛の処世術

要するに有能な人材がある状況下で最高のパフォーマンスを発揮しても状況が変われば、貢献を評価されるどころか上司の恐れを生むことになり、上司の恐れによって身の破滅を招く恐れがあるということです。

黒田官兵衛はむしろ、そのことを察して巧みに見を処した例です。

同じ時代の謀臣で、本多正純という人物がいます。

本多正純は、その父・正信とともに、徳川家康の謀臣として活躍した人物です。

陰謀を巡らし、徳川に天下をもたらした智謀の持ち主でした。

父・正信もまた、一級の謀略家でしたが、正信が正純に遺言したとされるのが「我の死後に、汝は必ず増地を賜るだろう。3万石までは本多家に賜る分としてお受けせよ。だがそれ以上は決して受けてはならぬ。もし辞退しなければ、禍が必ず降り懸かるであろう」ということです。

謀臣タイプは、敵がいなくなれば、主から警戒されます(そりゃそうです。他人を陥れるのが仕事だったわけですから)。

加えて、主と内々で謀議を重ねていることから親しくみえ、家中からの嫉妬も集まりがちです。

主からの警戒と家中からの嫉妬が集まる謀臣が、加増され実質的な力を増すようになると、いよいよ立場が危うくなって来ます。

 

家康の死後、正信は正純に家督を譲り、1年後79歳で亡くなりました。

その後、正純も父・正信同様権勢を振るいましたが、正信の遺志に背いて15万石の加増を受け、後に失脚しています。

 

歴史は人間行動・人間心理を学ぶ格好の教材

今回は、トップとNo.2(参謀)の関係を例に取りましたが、それ以外にも歴史を眺めていると、様々な人間関係、人間心理のケーススタディが存在します。

経営者が歴史を学ぶと、そのケーススタディから、中心になっているエッセンスを抽出して考える参考にすることができます。

ケーススタディから学んでおくメリットは避けられる失敗やリスクを事前に察知できる可能性が高まることです。

我々の人生の時間は限られていますから、全てに対してトライアンドエラーをするだけの十分な時間が取れるとは限りません。

先人がすでにしている失敗や経験して解決済みのトラブルについて学ぶことで、しなくて良い失敗をしなくてすんだり、避けられるトラブルを避けることが出来るのです。

歴史の学び方:自分自身のポテンシャルを高める

歴史を学ぶと能力が高まる

歴史を経営者が学ぶメリットとして、経営者自身のポテンシャル=潜在能力を高める事ができる点があげられます。

実はこのアイデアは、私の独創ではありません。

私にとってのビジネスの師である池本克之さんが発見した歴史を学ぶ利点です。

池本さんによると、通常であれば結果が変化するはずのない能力適性試験の結果が、歴史上の偉人の伝記を読むことで高まることがあるそうです。

その適性試験は、通常、結果が変動しない種類のもので極めて信頼性の高い適性試験なのですが、歴史上の偉人の伝記を読むとポテンシャルのパラメーターだけが向上することが確認されています。

 

自己効力感が高まると能力も引き上げられる

メカニズムは解明されていないのですが、私の仮説は歴史的偉人の人生を読み手が自分に投影することで、「自己効力感」高まるために、結果的にポテンシャルが引き上げられるのではないか?ということです。

「自己効力感」とは、要するにある状況において「自分はできる」と感じられることを指します。

 

歴史上の偉人たちは「何かを成し遂げた人」ですから、その人物に感情移入したり、自分を投影して読書をすると、無意識に自分ができるイメージが刷り込まれるのでしょう。

実際、有名経営者でも歴史上の人物に心酔している人は少なくありません。

有名な例で言えば、ソフトバンクの孫正義さんがそうです。

孫正義さんは、坂本龍馬をほとんど崇拝と言っていいほど尊敬して、グッズを集めています。

実際のところ、坂本龍馬のイメージと実像の間には結構な隔たりがあるかもしれません。

しかし、ポイントは真実がどうか?というよりは、どれだけ歴史上の偉人を通して、自分について肯定的なイメージを投影できるかです。

 

 

歴史上の人物について学ぶことを通して、自分の自己効力感を高めれば、結果的にポテンシャルを向上させることが出来るという話でした。

 

まとめ

今回は、経営者が歴史から学ぶべき3つのことというテーマでお話しました。

私が考える学びの3つのポイントは、

・物事の 経緯・背景を知るために歴史を学ぶ

・人間 行動の ケーススタディとして歴史を学ぶ

・自分自身の ポテンシャルを高めるために歴史を学ぶ

の3つです。

冒頭にも書きましたが、経営者が 歴史 を学ぶ上では、歴史の年表を覚えることには大した意味はありません。

また、あくまで過去を生きた人びとの経験を参考にするつもりで、過去の歴史=データを眺める心構えが重要です。

 

価値判断はひとまず置いて、その時、その場所で、どんな人物が、どんな動機で、どんな判断を下し、実際に何を行い、その結果としてどんな状況が生まれたのか?を客観的な視点で観察する事が重要です。

それが、良いか悪いか?善か悪か?という価値判断はひとまず脇において、事実を吟味することが重要だと私は考えています。

 

ちなみに、歴史的事実というのは、あくまで入手可能な史料=証拠にもとづいて極力、論理的に整合性がとれるように説明されたものです。

史料の伴わない主張や解釈は歴史ではなく、ファンタジーや妄想の類であるといえるでしょう。

史料的な裏付けもなく持論を展開したり、自分が信じたいことを主張するのは歴史ではありません。

どちらかと言うと、フィクションや物語のたぐいです。

フィクションや物語からも、学ぶべきことはたくさんありますが、ケーススタディとしては活用しにくいと思います。

 

現実のビジネスでもそうですが、歴史についても書かれている内容が事実なのか?それとも、意見や主張なのか?を見極めながら読む必要があります。

例えば、先日、徳川幕府にとっての正史『徳川実紀』についてテレビで検証していたのですが、いろいろと「盛った」エピソードが記載されていることが指摘されていました。

考えてみれば、徳川実紀は徳川家康が没後、100年以上経ってから編纂された歴史書です。

その点から見ても、事実がそのまま書かれているか?といえば、少々怪しくなってきます。

 

その点をわきまえてさえいれば、歴史は経営者の思考力を高め、現実社会での課題解決能力を向上させてくれるはずです。

 

時と場所は変われど、人の営みは変わることがないのです。


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