マネジメントの落とし穴 :マズローの罠
目次
マネジメントの落とし穴
マネジメントの落とし穴 があるという話です。
とくにはまりがちな落とし穴は「マズロー」です。
マズローって、ご存知だと思うんですが、念のため解説すると、欲求階層説を唱えた心理学者です。
彼のアイデアで有名なのは、欲求の5段階説です。
人間の欲求は下から、
生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の順に
ピラミッド状に構成されているという考え方を指します。
人間は低次の欲求が満たされると、より高次の欲求を満たそうとするという話です。
凄くわかりやすいので、多くの人から支持をされています。
マネジメントをしている人、コーチ、心理学者、人事の人など多くの人がその信奉者です。
しかし、
これ、実務的にどの程度、機能しているのでしょうか?
マネジメントの落とし穴 としてのマズロー
これはよくある話なのですが、経営者が社員に「仕事を通して自己実現」をしてモチベーション高く働いてもらおう。と考えることがありますよね?
これというのは、高度経済成長期と違って業績を上げたスタッフがいても組織自体を大きく出来ないし、組織が大きくならないからポジションを用意できないという事情が背景にあることが多いと思います。
同じ事情で、それほど金銭的にも報いることが出来ないということもあります。
その結果として、「会社で仕事をすることで自己実現をしてもらおう。」という考え方が出てくるのではないでしょうか?
社会全体が低成長に陥っている環境では、経営者は従業員に対してポジションを増やすして与えることも、報酬面で報いてあげることもしにくい状況です。
他の手段でモチベーションを高めてあげるそれが「自己実現」という形で現れているわけです。
例えば、社員一人ひとりとの個別面談をして、本人の目標と会社の目標のすり合わせをしたり、キャリアパスを用意したり、スキルアップについて会社と社員の間で目標設定をしたりします。
しかし、実は、ここにこそが経営者と社員の間の「ズレ」があるのではないでしょうか?
スタッフはそもそも「自己実現」を求めているのか?
マズローの欲求5段階説によれば、「自己実現」は5段階目。つまり、最後の欲求ということになります。
その大前提としては、それより手前にある、生存、安全、所属、承認の欲求を満たされている必要があります。
しかし、実際問題、社員のうちどれくらいの割合の人たちが4つの欲求を満たされた状態で働いているのでしょうか?
実感値としては、とてもよく経営されている会社でも生存、安全、所属の欲求を満たすまでがせいぜいな気がします。
つまり、承認の欲求まで満たされて、自己実現を目指せる段階にいる社員はごく僅かということです。
だとすると、会社で自己実現してもらうことでモチベーションを維持しようとする経営者の思惑自体が的外れということになるはずです。
これが、 マネジメントの落とし穴 です。
そもそも、経営者の考える従業員の欲求段階と、従業員の実際におかれている欲求段階がズレているわけですから、施策が空振りに終わるのも無理ありません。
マネジメントで重視するべきこと
経営者と従業員の欲求段階の感覚にはズレが有ります。
経営者は「スタッフも自己実現したいだろう」「理想があるだろう」「ライフプランがあるだろう」とかんがえるからこそ、「会社を通して自己実現をしてもらう」と考えて施策を練るわけです。
ところが、従業員の大半は「自己実現の欲求」を持つ段階にはいないから、経営者が思うようなモチベーションアップが望めないというのが マネジメントの落とし穴 になっています。
もちろん、従業員にやる気が無いわけではありません。
しかし、やる気の方向性や内容が、経営者のそれとはことなるということです。
経営者の多くは常に「より高き」を望みます。
今月の目標を達成すれば、また来月も、今年度も、来年度もと考えますよね。
それが自然ですし、経営者はそうでないと会社の経営が成り立ちません。
一方で、従業員(もちろん、全員ではありませんが)は、「ほどほど」の満足を求めていることが多いです。
むしろ、ハードルが上がり続けること、常にノルマに追われ続けることに嫌悪感を抱いたり、疲れている人も少なくありません。
ここに経営者と従業員の感覚のズレがあります。
そもそそも、より良い会社を作るためにしているマネジメント施策が、効果を発揮しない事自体が経営者のストレスになってしまっては本末転倒です。
では、経営者はどのように従業員のモチベーションに関わればよいのでしょうか?
従業員のモチベーションを支えるのは承認
多くの企業では、報酬やポジション以上に「承認」が不足しています。すごーく、簡単に言うと従業員は「かまって欲しい」「認めて欲しい」「ほめて欲しい」のです。
しかし、大抵は2つの壁によって、その思いを遂げられずにいます。
1.社長の基準が高すぎて、褒められる基準に達しない。
2.基本的には褒めない社風。
もちろん、わかりやすくするために「褒める」という言葉を使っているだけで、要するに「認められている」「評価されている」という実感を得たいわけです。
それらが、揃うと従業員は会社を「自らのいるべき場所」とみなすようになります。そしてそれらがない場合は、会社は「社長の所有物」としかみなされません。つまり、他人事ということです。
人間は自分の居場所、自分の給与、自分の安全、自分の家族、自分の頭痛、自分の車には関心をもつものです。しかし、他人のものには基本的には興味がありません。
それが、世界の飢餓や紛争が解決しない理由でもあります。
例えば、アフリカの何処かで誰かが飢えているというこよりも深爪してしまった右手の薬指のことが気がかりですし、有名ブランドのスポーツシューズを作るためにメキシコで子どもが過酷な労働を強いられていることよりもその靴がどこでいくらで買えるのか?の方が関心が高いわけです。
「自分のこと」となると、どんなに些細なことでも遠くの大きな問題より気になります。
そういう人間の性質を考えれば、会社を「自分のもの」「自分の居場所」として認識してもらうことが如何に重要かがお分かりいただけるはずです。
そのことの倫理的な是非は置くとして、人間というのは基本的にそういう性質の生き物です。
そうであるならば、それを知った上で、最適な方法をより良い目的のために使ったほうが良いと思いませんか?
社員をわかりやすく承認してモチベーションを高める
例えば、褒める。積極的に、部下の仕事に関心を示す(介入するとかではなく)、「ありがとう」を言う。小さなことでも良い仕事、良い行いは賞賛する。
従業員は自分が承認される場所を無意識に「居場所」と認識ます。ポイントは、従業員から見て会社が「かけがいのない居場所」になることです。
このアイデアの良い所は、ポジションとか、金銭的報酬という物理的?な報酬に頼らなくても、社員のモチベーションを維持できることです。
一方で、このアイデアの悪いところはやや「面倒くさい」ということでしょうか。
経営者であれば、「自分のモチベーションくらい自分で管理しろよ」「仕事だろ?」という感覚の人は多いはずです。
仰るとおりです。あなたは正しい。
しかし、「正しくて失敗する」方法と、「間違っているけど上手くいく」方法のどちらかを選択しなければいけないとしたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか?
私なら、後者を選びます。
少なくとも、「間違っている」といっても道義的、倫理的には問題ないのですから、ぼくなら確実に上手く生きそうな方を選びます。
少々、気疲れするかもしれませんが、従業員が気分よく働いて成果を出してくれるならそれに越したことはないからです。
何を選ぶかは、アナタ次第です。
株式会社NorthStar 今野富康
ブログでは書けないディープな情報や
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あと、一応、アメブロもやってます。(いつ、追い出されるかわからないけど)
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